公正社会研究会

千葉大学リーディング研究育成プログラム 未来型公正社会研究

第七回研究会について

第七回公正社会研究会が開催されました。

 

日時 2017年2月10日(金)

   13時~14時半

場所 人社研棟4階 共同研究室1

報告者 人文社会科学研究科 博士後期課程 府中明子

報告テーマ 「首都圏にくらす未婚女性にとって恋愛結婚の条件とは何か-インタ  ビュー分析から-」

 

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 2017年2月10日に、未来型公正社会研究第七回研究会を開催いたしました。今回は「首都圏に暮らす未婚女性にとって恋愛結婚の条件とは何か-インタビュー分析から-」というテーマで、未来型公正社会研究RAで人文社会科学研究科博士後期課程所属の府中明子氏が報告を行いました。

 府中氏の報告は、結婚相手となりうる相手とすでに巡りあっている人々を対象に、結婚したいと語る人々のうち、恋人がいるあるいはいたにも関わらず、結婚しなかった女性の語りを分析し、そのプロセスを追うものでした。同様のテーマに関する先行研究では、結婚に至る条件として経済的な側面と恋愛感情に着目した研究が進んでおり、近年は前述の2つの条件に加えて、女性は結婚の際に男性の人格や意識を重視しているという指摘がなされてきました。今回の府中氏の報告では、出会いの場、交際、結婚への意欲もあるが、結婚を断念した未婚女性へのインタビューを行い、その中での彼女たちの語りを分析することでその要因を明らかにすることを試みました。インタビュー調査は首都圏に住まい・職場・学校がある25~34歳の未婚女性を対象として、事前に質問項目を設定しつつも、それぞれの質問に対してどの程度の長さで回答するかについては固定されていない半構造化インタビューの手法を採用して行われました。

 府中氏によるとインタビュー調査からは、①交際相手への恋愛感情の有無が重視されていること、②結婚に関わる経済的な側面への言及、③子どもに対する交際相手(男性)の態度や意識の3点を首都圏に暮らす未婚女性は、結婚や将来展望を描く上で重要視している様子が明らかになりました。恋愛関係の末に結婚をしたいという語りが対象者全員に共通してみられ、結婚相手には経済的安定を求めるがそれは子どものいる家族を持つためには安定した収入が必要だという認識に基づき、結婚後は子育て世帯を想定していることが描き出されました。そして結婚を躊躇した要因として、将来的な夫となる交際相手の家事や育児に関する気持ち、特に子どもに対する態度や意識への言及がなされていること、子どもが好き、子どもが欲しいという男性の態度や意識が恋愛における一つの魅力として語られているとの指摘がなされました。

 インタビュー調査の語りの分析結果として、府中氏は夫となる男性の子どもに対する感情が恋愛感情、経済的要因に並ぶ、第3の結婚の「条件」ではないかという結論を導きだしました。恋愛結婚を志向し、それが実現できる可能性が高く、経済的困難がみられない首都圏在住の女性の間では、交際相手の男性が子どもに対しポジティブな感情を示さないことで結婚が棄却ないし恋愛感情がなくなる事例が観察されることが知見として得られたと述べられました。そしてインタビューからは子どもに対する男性の意識の側面への言及は多くなされているものの、実際の家事・育児労働への従事については女性側からの言及が少ないことも考察結果として挙げられました。

 府中氏の報告後、報告で挙げた結婚の3つの条件(①恋愛感情、②経済的要因、③子どもに対する感情)を既婚者へのインタビューによって反証することができるか、男性が交際相手の女性に対し子どもが好きだというのはそれ自体が結婚の意思表示ではないか、家族社会学における結婚に関する先行研究は統計調査が中心であるのに対し、出会い・交際・結婚というプロセスを追跡する府中氏の研究の意義について、参加者から活発な質疑と議論が行われました。

 次回、第八回未来型公正社会研究会は、未来型公正社会研究RAで人文社会科学研究科博士後期課程所属の七星純子氏を報告者として、2017年3月15日(水)14時より人社研棟4階共同研究室1にて実施予定です。