公正社会研究会

千葉大学リーディング研究育成プログラム 未来型公正社会研究

公開シンポジウム「ワーク・ライフ・バランス概念の学際的再検討」 開催のご報告

 2018年2月13日(火)に千葉大学人文公共学府マルチメディア会議室にて公開シンポジウム「ワーク・ライフ・バランス概念の学際的再検討」を開催しました。本シンポジウムは法政策実証班に属する大石亜希子教授の科研費研究「非典型時間帯就労に着目したワーク・ライフ・バランスの国際比較研究」と未来型公正社会研究の共催で実施されたもので、同教授の司会のもと、同班の皆川宏之教授はパネリストとして、また、代表の水島治郎教授は討論者として参加しました。社会学労働経済学、産業保健学、労働法学の第一線の研究者によるパネリスト報告では、各分野において「ワーク」と「ライフ」が何を意味し、「バランス」のとれた状態とはどのようなものであるかが説明され、分野間での違いが浮き彫りになりました。パネル・ディスカッションでは政府の働き方改革の評価を含めて学問分野横断的な課題について、活発な議論が行われました。

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2018年2月13日(火)シンポジウム開催!

「公開シンポジウム ワーク・ライフ・バランス概念の学際的再検討」

 ワーク・ライフ・バランスについての研究は各分野で進んでいるものの、学問分野により概念が異なるために共通理解を得たり、研究成果を政策に反映させることが難しい現状があります。本シンポジウムでは専門家を招聘し、概念整理を行うとともにあるべき政策の方向性について議論します。

【日時】2018年2月13日(火) 13:30~16:30(受付開始13:00)

【場所】千葉大学西千葉キャンパス大学院人文公共学府

   (人文社会科学系総合研究棟)2階
    マルチメディア会議室(ポスターをご覧ください)
   ※参加無料・申し込み不要・先着順(定員80名)

【パネリストと専門分野】(敬称略)
黒田祥子・経済学(早稲田大学教育・総合科学学術院教授)
筒井淳也・社会学立命館大学産業社会学部 /現代社会学科教授)
渡井いずみ・産業保健学(名古屋大学医学部保健学科准教授)
皆川宏之・法学(千葉大学社会科学研究院教授)

【討論者と専門分野】
松田茂樹・家族社会学中京大学現代社会学部教授)
水島治郎・比較政治学千葉大学社会科学研究院教授)

【司会・コーディネーター】
大石亜希子(千葉大学社会科学研究院教授・経済学)

【連絡先】千葉大学大学院社会科学研究院大石亜希子研究室
     E-mail: m_yoshinaga@chiba-u.jp
     TEL: 043(290)3579

※本シンポジウムはJSPS科研費17H02585「非典型時間帯就労に着目したワーク・ライフ・バランスの国際比較研究」(研究代表:大石亜希子)および千葉大学リーディング研究育成プログラム「未来型公正社会研究」の一環として開催するものです。

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2017年11月22日公開講座、11月23日 国際シンポジウムを開催!

「コミュニティの幸福と公正」をテーマに、2017年11月22日(水)、第3回公開講座を開催いたします。 マイアミ大学からコミュニティ心理学の権威者であるプリレルテンスキー氏をお招きし、「コミュニティの「良き状態」の理解と促進」について講演していただきます。
 11月23日(祝/木)には、第4回国際シンポジウムを開催します。プリレルテンスキー氏が「公正としての良さ」について講演し、医学、社会学、公共政策・科学哲学と各分野の専門家 4名にコメントしていただきます。

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千葉大学リーディング研究育成プログラム「未来型公正社会研究」主催
第3回公開講座「コミュニティの「良き状態」の理解と促進」

- UNDERSTANDING AND PROMOTING COMMUNITY WELL-BEING -
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日 時: 2017年11月22日(水)午後16時10分~18時00分(受付開始15:30)
場 所: 千葉大学西千葉キャンパス 法政経学部棟 105教室
最寄駅: JR総武線西千葉駅」徒歩8分、京成千葉線みどり台駅」徒歩5分
参加無料・申し込み不要、日本語への逐次通訳あり

スピーカー: アイザック プリレルテンスキー 氏(マイアミ大学 教授)

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千葉大学リーディング研究育成プログラム「未来型公正社会研究」主催
第4回国際シンポジウム「コミュニティの幸福と公正」

- Wellness as Fairness -
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日 時: 2017年11月23日(祝/木)午後13時30分~16時30分(受付開始13:00)
場 所: 千葉大学人文社会科学研究科系総合研究棟2階
     マルチメディア会議室(西千葉キャンパス)
最寄駅: JR総武線西千葉駅」徒歩8分、京成千葉線みどり台駅」徒歩5分
参加無料・申し込み不要・先着順(定員80名) 日本語への同時通訳あり

Lecture1 プリレルテンスキー 氏 (マイアミ大学 教授)
WELLNESS AS FAIRNESS「公正としての良さ」
Lecture2 小林正弥 氏(千葉大学大学院社会科学研究院 教授)
Communitarianism and Positive Psychology「コミュニタリアニズムポジティブ心理学

コメント
坪田一男 氏 (慶應義塾大学医学部教授)
廣井良典 氏 (京都大学こころの未来研究センター教授)
秋山美紀 氏 (東京医療保健大学准教授)
福島慎太郎 氏(青山学院大学助教)

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2017年10月30日(月)国際シンポジウム、10月31日(火)公開講座開催!

 2017年10月30日(月)、「公正の未来を広く深く考える」をテーマに、第三回国際シンポジウムを開催いたします。 ビジネス倫理の専門家二人をドイツからお招きし、社会・経済にとって倫理には何ができるのか語っていただき、日本の法哲学者二名が議論を挑みます。 10月31日(火)には、第二回公開講座を開催します。実際にドイツで倫理審査委員会の実務に携わった専門家が、「自動運転車のための倫理:ドイツの事例から」について解説します。

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千葉大学リーディング研究育成プログラム「未来型公正社会研究」
第3回国際シンポジウム「公正の未来を広く深く考える」
- Future of Fairness: Comprehensive and Normative Examination -
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日 時: 2017年10月30日(月)午後14時30分~17時30分
場 所: 千葉大学人文社会科学研究科系総合研究棟2階
     マルチメディア会議室(西千葉キャンパス)
最寄駅: JR総武線「西千葉駅」徒歩8分、京成千葉線「みどり台駅」徒歩5分
使用言語: 英語
Dr. Christoph Lütge(ミュンヘン工科大学 教授)
「ビジネス倫理の観点からの公正とは」
コメント:嶋津格(獨協大学特任教授)
Dr. Matthias Uhl(ミュンヘン工科大学「デジタル化の倫理」研究グループ・ジュニアリーダー)
「公正さを実験する」
コメント:川瀬貴之(千葉大学大学院社会科学研究院教授)

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千葉大学リーディング研究育成プログラム「未来型公正社会研究」
第2回公開講座「自動運転車のための倫理:ドイツの事例から」
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日 時: 2017年10月31日(火)午後13時~14時30分(受付開始12:30)
場 所: 千葉大学人文社会科学研究科系総合研究棟2階
     マルチメディア会議室(西千葉キャンパス)
最寄駅: JR総武線「西千葉駅」徒歩8分、京成千葉線「みどり台駅」徒歩5分
参加無料・申し込み不要・先着順(定員80名)、日本語への同時通訳あり

スピーカー: Dr. Christoph Lütge(ミュンヘン工科大学 教授)
「自動運転車のための倫理:ドイツの事例から」

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水島治郎教授著作『ポピュリズムとは何か――民主主義の敵か、改革の希望か』が第38回「石橋湛山賞」を受賞

 このほど、当プログラムのメンバーである水島治郎教授の著、『ポピュリズムとは何か』(中央公論 新社,2016年)に対し、「石橋湛山自由主義・民主主義・国際平和主義の思想 の継承・発展に、最も貢献したと考えられる著作に贈られ」(石橋湛山記念財団 Webページ)る、石橋湛山賞が授けられることとなりました。

詳しくは、下記URLをご覧ください。

http://www.le.chiba-u.ac.jp/info/#info20170828

第九回研究会について

第九回公正社会研究会が開催されました。

 

日時 2017年5月24日(水)

場所 人社研棟4階 共同研究室1

報告者 社会科学研究院 教授 大石亜希子氏

コメンテーター 社会科学研究院 教授 皆川宏之氏

報告テーマ 「ワーク・ライフ・バランスを考える-24時間7日間経済との関連から-」

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 2017年5月24日、第九回公正社会研究会を開催いたしました。今回は「ワーク・ライフ・バランスを考える-24時間7日間経済との関連から-」というテーマで、法政策実証班所属の社会科学研究院教授である大石亜希子氏が報告を行い、同・皆川宏之氏がコメンテーターを務めました。

 大石氏の報告は、経済のグローバル化、IT化に伴って、日中以外のイレギュラーな時間帯に働く人々が増加する中での労働政策のあり方を検討するものでした。初めにWLB概念の再考と「ワーク」、「ライフ」、「バランス」の各用語が具体的に何を意味するのかの検討がなされました。WLBに類似する概念や用語は多数存在するものの、経済学、社会学産業心理学などの分野による違いが大きいことや、「ワーク」と対立する領域として「ライフ」や「ファミリー」が用いられてきたことが指摘されました。2000年代中盤よりWLBという用語が広まる中、「ワーク」が有償労働を指すことは共通理解となる一方、「ライフ」が何を意味するのかに関しては見解が分かれています。経済学的には「ライフ」は余暇を意味するものの、ファミリーという要素を勘案すると「ライフ」の中には無償労働を始めとする家庭内生産も含まれ、必ずしも休息や余暇を意味しないこと、ファミリーがない人にとってのWLBとは何を指すのかは十分に議論されていないことが指摘されました。「バランス」については、産業心理学ではワークとライフが時間的・質的に均等であることが重視されますが、経済学では時間的な等しさは問題とならず、主体的な選択がなされることと効用最大化が重視されてきました。「バランス」をとる主体は個人ベースですが、社会保障制度などの社会制度は世帯ベースで設計されているため両者の間でミスマッチが生じること、個人ベースのWLBにおける負の外部性への指摘もなされました。さらにWLBを巡る政策では「バランス」を考える際の時間軸が整理されておらず、日本の場合はライフサイクルをベースとしたWLB施策に偏っているが、労働者の立場からは1日単位でWLBを実現するための施策の方が重要だという問題提起がされました。

 次に、24時間・週7日間経済が子育て中の労働者の働き方にどのような影響を与えているのについて、近年の労働政策の動向と共に検討がなされました。大石氏の報告では、24時間・週7日間経済は、労働者の健康や安全を脅かすだけでなく、親がWLBを実現できないことにより子どもの健康や生活にも影響を及ぼし、そうした影響はひとり親世帯でより顕著であることが指摘されました。日中以外の時間帯に働く労働者は男女を問わず増えてこと、また、母子世帯の母親は二人親世帯の母親よりもイレギュラーな時間帯に働いている割合が高いことが図とともに説明されました。3月に罰則付き時間外労働の上限規制に関する政労使合意がなされましたが、その実効性には疑問が残ること、雇用関係によらない働き方の推奨は「労働者」の定義を曖昧化すること、現在の日本では休息権を確立することが重要ではないかという論点が大石氏より提示されました。

 大石氏の報告を受け、コメンテーターの皆川氏からは労働法的な観点からWLBの考察がなされました。皆川氏からは、まず労働法におけるWLBとは女性の社会進出の遅れや少子化問題、男性の長時間労働の抑制といった課題への対応を束ねる概念であることが示されました。労働法では元来「ワーク」と「ファミリー」を重視し、「ライフ」の観点は弱かったが、2007年に成立した労働契約法では、労働契約が仕事と生活にも配慮して締結され、変更されるべきとする規定が盛り込まれたことが述べられました。次に労働時間規制とWLBの関係に目を向けると、労働基準法上の「労働者」では時間的な拘束性の有無が重視され、労働からの解放の保障が中心となっていること、使用者の指揮監督下で拘束される時間が長すぎないようにすることが労働法上の重要な課題であることが挙げられました。最後に大石氏の報告でも論点に挙がった罰則付き時間外労働の上限規制については、過労死の認定基準以下であったとしても心身を壊すケースは多々あること、労働時間の総量規制だけでは不十分であり勤務時間のインターバル制度や大石氏も主張した休息権の導入の必要性が主張されました。

 大石氏の報告と皆川氏のコメント後は、一定の労働時間を超えると労働生産性と効率性が下がることを論証できればインターバル制度や休息権の導入を推進できるのではないか、サービス経済への移行自体を止めることが困難な状況でフレックス化に伴う際限のない労働はいかにして防ぐことができるのか、男性の無償労働への参入、つまり「ライフ」活動への参加が増えない限りは女性の「ワーク」を巡る問題も解決しないのではないかといった多数の質問が挙がり、参加者との活発な議論が繰り広げられました。

第八回研究会について

第八回公正社会研究会が開催されました。

 

日時 2017年3月15日(水) 14時~15時

場所 人社研棟4階 共同研究室1

報告者 人文社会研究科 博士後期課程 七星純子

報告テーマ 「人と人をつなぐ-中間支援の事例を通して-」

 

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 2017年3月15日に、未来型公正社会研究第八回研究会を開催いたしました。今回は「人と人をつなぐ-中間支援の事例を通して-」というテーマで、未来型公正社会研究RAで人文社会科学研究科博士後期課程所属の七星純子氏が報告を行いました。

 七星氏の報告は、家族形態の変化が進み社会的な孤立が深まる中で、専門家による支援だけでなく、地域社会の中におけるケアの仕組みをどのように構築していくのかを模索するものでした。地域社会を主体としたケアの仕組みづくりを進める上では、住民の活動参加が不可欠となりますが、実際には活動の担い手は不足しがちです。こうした状況の中で、多様な地域活動への参加促進を図っていくには、さまざまな世代が活動に参加しやくなるように人材や団体同士をつないでいく中間支援が重要になってきます。そこで七星氏の報告では、中間支援のあり方に着目して、地域をベースとしたケアに関わる対人サービスにおいて世代間のつながりがつくりづらい実状を確認した上で、中間支援組織が関わることで世代間のつながりを創出する試みについて検討がなされました。

 まず、世代間のつながりの現状についての検討を行う上で千葉市NPOにおける学生の参加状況に関する調査データの分析が示されました。調査データからは、医療、保健、福祉、社会教育、子どもに関連する活動に取り組む市内のNPOへの学生の参加状況は2割強であり、学生スタッフの募集を行っている団体は4割近くあり、学生の参加を期待する声が大きいことが明らかになりました。学生スタッフの募集方法としては、学校のボランティア・センターや大学(短大)の特定の研究室を通じてというルートが多いことが挙げられました。そして活動対象別の学生の参加状況について考察をすると、主な活動対象者が「高齢者」となる団体における学生の参加率は、「障がい者・障がい児」、「子ども」、「市民」といった対象と比較し低く、学生と高齢者の接点の少なさ、関係の薄さが指摘されました。その上で学生と高齢者の接点を増やすには、教育機関が接点づくりの仲介者となることが重要ではないかという提案がなされました。

 次に食を通じて異世代をつなぐ取り組みについての事例として、食事サービスを中心としたボランティアベースの活動を行う、老人給食協力会ふきのとうの活動が紹介されました。発足当初は子ども会活動の一環として食と子どもをつなぐ活動が主であった団体が、活動を進める中で地域の中で孤立している高齢者の存在に気づき、食事を通じた高齢者の生活支援へと活動領域を拡大していった様子が述べられました。七星氏の報告からは、食には世代や性別を超えて人々をつなげる力があること、生活支援という継続性や耐久性が必要とされる活動経験の蓄積が重要となってくることが挙げられました。さらに近年は活動の担い手の高齢化、人材不足が進んでいるため、こども食堂の活動者と連携を進めることで子どもの安全な居場所づくりと食事支援の活動を地域社会の中に定着させることで多世代型の共生の居場所づくりを模索していることが報告されました。

 七星氏の報告後は、報告の射程として中間支援組織の重要性と多世代共生の推進という2つの論点を同時に扱うことへの難しさ、中間支援組織同士のネットワークづくりのあり方、学生と高齢者の間には世代格差だけでなく階層格差も含まれているために余計に世代間コミュニケーションがとりづらいのではないかという指摘が出席者から挙がり、参加者間で活発な議論がなされました。