公正社会研究会

千葉大学リーディング研究育成プログラム 未来型公正社会研究

第一回研究会について

第一回研究会が開催されました。

 日時 2015年12月9日(水)
    午後12時30~午後2時

 場所 人社研棟4階・共同研究室1

    報告者 川瀬貴之 先生(公共思想班)

 報告テーマ 「自由・平等・公正をめぐる問題設定の一例」

 

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リーディング研究育成プログラム「未来型公正社会研究」第一回研究会

                                                                                                                            文責者

                                                                                                特任研究員 日野原由未

 

 2015年12月9日、千葉大学人社研棟共同研究室1にて、第一回公正社会研究会が開催されました。報告者は、千葉大学政経学部准教授、川瀬貴之氏であり、報告テーマは、「自由・平等・公正をめぐる問題設定の一例」です。

 川瀬氏からは、自由、平等、公正について、法哲学の見地からの報告が行われました。まず、自由については、各人がある行為に対して他者からの干渉を受けないことを意味する消極的自由が、自由という規範にとって重要であることが説明されました。このように自由をとらえると、新自由主義市場経済に対する批判は、自由という規範そのものに対する批判というよりも、その過程で生じる搾取の構造や分業の進展による生産活動の意味や意義からの疎外に対する批判ということがいえます。したがって、新自由主義批判は、自由をめぐる問題というよりも、むしろ正義や公正をめぐる問題であることが指摘されました。

 つぎに、平等については、機会の平等論と結果の平等論にはじまり、“Luck Egalitarianism” によって平等論と責任論との関係が指摘され、さらに、ウォルツァーの複合的平等論の観点からも平等とは何かということが検討されました。川瀬氏からは、人間の本質である差異に対して、どこまで平等という規範をもちこむべきであるのかという点が平等をめぐる課題であり、こうした課題があることが、平等という規範を現実の制度に結びつけることの難しさにもつながるということが指摘されました。

 最後に公正については、正しさを主観と客観のどちらでとらえるべきであるのかということが説明されました。これは、個人の主観を超越した客観的なところに正しさという規範があるのか、あるいは人の評価や時代や文化の変化によって正しさは変化するのか、という議論につながる問題提起となります。「未来型公正」を掲げる本リーディング研究育成プログラムにおいて、公正という規範をどちらの立場でとらえるのかという点は、重要な問題設定となります。

 以上の川瀬氏の報告について、報告後の討論では改めてそれぞれの規範に対する共通認識を確認したうえで、とりわけ公正について、環境によって変化する相対主義的な立場で理解する場合、どの範囲に相対性を位置づけるのかという点で活発な議論が行われました。

 以上、第一回目の研究会である今回は、川瀬氏の報告によって、本リーディング研究育成プログラムが取り組む「未来型公正」とは何かということが、自由、平等、公正の概念布置の整理によって検討されました。