公正社会研究会

千葉大学リーディング研究育成プログラム 未来型公正社会研究

第八回研究会について

第八回公正社会研究会が開催されました。

 

日時 2017年3月15日(水) 14時~15時

場所 人社研棟4階 共同研究室1

報告者 人文社会研究科 博士後期課程 七星純子

報告テーマ 「人と人をつなぐ-中間支援の事例を通して-」

 

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 2017年3月15日に、未来型公正社会研究第八回研究会を開催いたしました。今回は「人と人をつなぐ-中間支援の事例を通して-」というテーマで、未来型公正社会研究RAで人文社会科学研究科博士後期課程所属の七星純子氏が報告を行いました。

 七星氏の報告は、家族形態の変化が進み社会的な孤立が深まる中で、専門家による支援だけでなく、地域社会の中におけるケアの仕組みをどのように構築していくのかを模索するものでした。地域社会を主体としたケアの仕組みづくりを進める上では、住民の活動参加が不可欠となりますが、実際には活動の担い手は不足しがちです。こうした状況の中で、多様な地域活動への参加促進を図っていくには、さまざまな世代が活動に参加しやくなるように人材や団体同士をつないでいく中間支援が重要になってきます。そこで七星氏の報告では、中間支援のあり方に着目して、地域をベースとしたケアに関わる対人サービスにおいて世代間のつながりがつくりづらい実状を確認した上で、中間支援組織が関わることで世代間のつながりを創出する試みについて検討がなされました。

 まず、世代間のつながりの現状についての検討を行う上で千葉市NPOにおける学生の参加状況に関する調査データの分析が示されました。調査データからは、医療、保健、福祉、社会教育、子どもに関連する活動に取り組む市内のNPOへの学生の参加状況は2割強であり、学生スタッフの募集を行っている団体は4割近くあり、学生の参加を期待する声が大きいことが明らかになりました。学生スタッフの募集方法としては、学校のボランティア・センターや大学(短大)の特定の研究室を通じてというルートが多いことが挙げられました。そして活動対象別の学生の参加状況について考察をすると、主な活動対象者が「高齢者」となる団体における学生の参加率は、「障がい者・障がい児」、「子ども」、「市民」といった対象と比較し低く、学生と高齢者の接点の少なさ、関係の薄さが指摘されました。その上で学生と高齢者の接点を増やすには、教育機関が接点づくりの仲介者となることが重要ではないかという提案がなされました。

 次に食を通じて異世代をつなぐ取り組みについての事例として、食事サービスを中心としたボランティアベースの活動を行う、老人給食協力会ふきのとうの活動が紹介されました。発足当初は子ども会活動の一環として食と子どもをつなぐ活動が主であった団体が、活動を進める中で地域の中で孤立している高齢者の存在に気づき、食事を通じた高齢者の生活支援へと活動領域を拡大していった様子が述べられました。七星氏の報告からは、食には世代や性別を超えて人々をつなげる力があること、生活支援という継続性や耐久性が必要とされる活動経験の蓄積が重要となってくることが挙げられました。さらに近年は活動の担い手の高齢化、人材不足が進んでいるため、こども食堂の活動者と連携を進めることで子どもの安全な居場所づくりと食事支援の活動を地域社会の中に定着させることで多世代型の共生の居場所づくりを模索していることが報告されました。

 七星氏の報告後は、報告の射程として中間支援組織の重要性と多世代共生の推進という2つの論点を同時に扱うことへの難しさ、中間支援組織同士のネットワークづくりのあり方、学生と高齢者の間には世代格差だけでなく階層格差も含まれているために余計に世代間コミュニケーションがとりづらいのではないかという指摘が出席者から挙がり、参加者間で活発な議論がなされました。