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公正社会研究会

千葉大学リーディング研究育成プログラム 未来型公正社会研究

第六回研究会について

第六回公正社会研究会が開催されました。

 

日時 2016年9月14日(水)

   12時30分~14時

場所 人社研棟4階 共同研究室1

報告者 人文社会科学研究科 博士課程 中井良太

報告テーマ 「自由と権利から公正を考える-左翼リバタリアニズムを手掛かりに」

 

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 2016年9月14日に未来型公正社会研究第六回研究会を開催いたしました。今回は「自由と権利から公正を考える-左翼リバタリアニズムを手掛かりに」というテーマで、未来型公正社会研究RAで人文社会科学研究科博士課程所属の中井良太氏が報告を行いました。

 中井氏の報告は本研究会の課題となっている「公正」という概念を改めて整理しなおし、その上で「新しい公正」に資するのではないかと考えられる左翼リバタリアニズムの議論を紹介するものでした。法哲学、政治哲学の議論から「公正」を捉えなおすことを主な目標とし、具体的には左翼リバタリアニズムの代表的論者であるヒレル・スタイナーの議論における自由と権利の検討を通じて「新しい公正」へ向けた一視座を提供しました。

 今回の中井氏の報告では、まず本研究会が考える「新しい公正」は正義という理念を基礎としながら、平等や自由という複数の価値も含むため、諸価値間のバランスをいかに図るのかが重要であり、それに加えて異質性や多様性も重視する概念として提起されている点を確認しました。次いで中井氏からは、国家と個人の権利について検討するリバタリアニズム、その中でも特に左翼リバタリアニズムと呼ばれる思想が「新しい公正」を考える上で有益だという提起がなされました。左翼リバタリアニズムでは、自己所有権は認めるが同時に広範な分配も認める立場にあり資源の分配に関する平等主義的な配慮がなされること、自由と権利という2つの価値を重視するが、結果としては再分配も認めるため平等も内包しているという理解が示されます。そこで左翼リバタリアニズムの最も代表的な論者であるスタイナーの議論における自由と権利についての考察がなされました。

 スタイナーはアイザヤ・バーリンの積極的自由/消極的自由の分類では、消極的自由の立場を採り、妨害がないこと、ある行為が妨害されない領域を確保することが自由という価値において重要になるという考えを示します。スタイナー自身が自由を考える上で権利がポイントとなると主張する理由は、それが消極的自由の配分を規定するものであり、権利を用いることで自由が妨害されない状態を確保することにつながると考えるからだとされます。人の領域を構成する権利は所有権として考えられ、スタイナーの議論では所有権に基づいた領域が共存可能となるのは、権利に対応する義務が特定された行為を命じるからであり、権利が共存可能な場合には他の全ての人には権利の保有者が特定の対象物を使用するのを妨げない義務があると解釈されていることが紹介されました。

 以上のスタイナーの議論に対し中井氏からはスタイナーは所有権の重要性を指摘しているにも関わらず市場の機能への言及がほとんどない点、成人間における自由と権利の話としては筋が通るが子どもの権利をどのように説明するのかが不明慮であることが指摘されました。その上で今後の検討課題として、世代間正義のあり方をどのように取り扱うのか、平等を担保する際に重要となる資源配分への考察の必要性が挙げられました。

 中井氏の報告終了後、市場と資源という要素を組み込んだ際には権利と平等はいかにして連関するのか、リベラルと左派リバタリアンの相違はどこにあるのか、「大きな政府」・「小さな政府」を論じる際の「大小」は権限に関してなのか再分配の規模に関してなのかという質問がなされ、活発な質疑応答が行われました。