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公正社会研究会

千葉大学リーディング研究育成プログラム 未来型公正社会研究

第五回研究会について

第五回公正社会研究会が開催されました。

 

日時 2016年7月27日(水)

   12時~13時20分

場所 人社研棟4階 共同研究室1

報告者 法政経学部 教授 石戸光氏

報告テーマ 「ASEANの統合はどこへ:インクルーシブネスについて考える(Whither the ASEAN Integration: A Focus on its Inclusiveness)」

 

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 2016年7月27日に未来型公正社会研究第五回研究会を開催いたしました。今回は「ASEANの統合はどこへ:インクルーシブネスについて考える(Whither the ASEAN Integration: A Focus on its Inclusiveness)」というテーマでグローバル・地域班所属の法政経学部教授である石戸光氏が報告を行いました。

石戸氏には、本年11月19日に開催を予定している千葉大学リーディング研究育成プログラムの国際シンポジウムの概要についてご紹介いただきました。まず、西洋諸国とは異なる独自の形で統合を進めているASEANでは、「インクルーシブネス(Inclusiveness)」、日本語に訳すと「あまねく広がる」、「全員参加型」、「社会の各層の人々を含めること」を重視した社会づくりが目指されていることが紹介されました。その上で国際シンポジウムでは、①地域統合を進めるASEANにおける「インクルーシブネス」つまりは包括性や全員参加のあり方について、②政治、経済、民族、言語といったASEANの多様性と地域統合の関係、③市民社会の役割、④複数の主権国家が共同で開発を進めるための法的枠組みの形成といったASEAN統合と「主権」をめぐる議論の4点を中心に海外から招待した専門家を交えて一般公開の形で議論することが報告されました。現在ASEAN加盟国は10か国あるが、今回はその中でも民主化途上にあるミャンマーに焦点を当てること、キーワードとしては、「格差なき経済統合」、「市民社会」、「主権国家」、「内政干渉」、「教育・福祉政策」が挙げられました。

海外招へいゲストとしては、ミャンマー民主化政権の政策に大きな影響力を有する国際機関の一つである独立研究機関経済社会開発センター(Centre for Economic and Social Development)から農村家計調査や水産物産業がもつ貧困削減の役割について研究しているベン・ベルトン氏(Dr. Ben Belton)とオー・へイン氏(Mr. Aung Hein)の2名と国際機関メコン・インスティテュート(Mekong Institute)代表のワットチャラス・リーラワス氏(Dr. Watcharas Leelawath)の合計3名を招待することが報告されました。3名の海外ゲストはいずれもASEANにおける「インクルーシブ」な開発のあり方や加盟国が直面している課題に対し専門的な知見から具体的な政策提言を行っている方々です。そのため本シンポジウムでの議論をミャンマー政府ならびにASEANへの政策提言として具現化していく上で3名の参加は重要であることが指摘されました。

石戸氏からは今回の国際シンポジウムでは、外務省、経済産業省といった政策形成者側からの提言だけでなく、市民社会の目線を積極的に取り入れたい旨が表明されました。研究者や専門家だけでなく、一般市民の方にASEANミャンマーについて興味を持ってもらい、ASEANが抱える政治・経済・文化・言語・民族の違いから生まれる差別や問題、そういった問題がある中で「インクルーシブ(全員参加)」な社会のあり方とはどういった形になるのか、市民の関わりを通じた支援のあり方を参加者と共に考えたいと述べられました。

石戸氏の報告終了後、地域統合はヨーロッパが先行していたがエリート主導であったため「取り残された人々」の問題が顕在化していること、「上からの統合」はアジアやラテンアメリカでは行われておらず、そうした国々が行っている柔軟な統合形態の方が現代的であり持続可能性が高いのではないかという指摘がなされました。またASEAN内では「内政不干渉」、「全会一致」はコンセンサスとなっており、2003年頃からは「参加型地域主義(participatory regionalism)」や「市民中心型地域主義(people-centered regionalism)」をキーワードに欧米向けの発信はしているが実態が明らかになっていないこと、大義名分を取っているだけであり実際に市民が「参加」している事例は少なく理念と実践の乖離があるという指摘もありました。11月の国際シンポジウムに向けて参加者から内容面、実施面双方に対しさまざまな質疑や提案がなされ、活発な意見交換が行われました。