公正社会研究会

千葉大学リーディング研究育成プログラム 未来型公正社会研究

国際シンポジウム開催のご報告

 2016年11月19日(土)に、千葉大学人社研棟1階マルチメディア講義室にて、未来型公正社会研究主催の国際シンポジウムを開催いたしました。

 未来型公正社会研究では、“Chiba Studies on Global Fair Society”と題して毎年国際シンポジウムを開催しています。グローバル社会における「21世紀の公正」のあり方とはどのようなものなのかという本プログラムの課題に対し、第二回目にあたる今回の国際シンポジウムではASEAN(東南アジア諸国連合)を取り上げました。

 シンポジウムのテーマは、“Whither the ASEAN Integration: A Focus on Inclusiveness”「ASEAN統合と開発-メコン川ミャンマーから考える」であり、基調講演を含めた3つのセッションでは、海外からの招聘ゲスト3名を含む報告者ならびに討論者が登壇し、講演と報告は英語でなされ、日本語への同時通訳も行われました。

 会場には、学内からは千葉大学徳久剛史学長、松元亮治理事、法政経学部酒井啓子学部長をはじめ、学外からの参加者を含め70名近い参加者が集い、充実した学術交流の場となりました。

 なお、本シンポジウムは科学研究費助成事業新学術領域研究(研究領域提案型)「計画研究A02 政治経済的地域連合(課題番号16H06548 研究代表:石戸光)」「研究計画B03 文明と広域ネットワーク:生態圏から思想、経済、運動のグローバル化まで(課題番号16H06551 研究代表:五十嵐誠一)」と共催し、千葉市教育委員会、千葉県、(公財)ちば国際コンベンションビューローの後援を受けて開催しました。

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 徳久学長による式辞ではまず、今回の国際シンポジウムにご列席いただいた、海外からの3名の招聘者を含めた先生方への歓迎の意が表されました。本プロジェクトの下での第二回目の国際シンポジウムが、学際的・国際的な知的交流と活発な議論の場となることへの期待が述べられました。

 続いて酒井啓子・法政経学部長からは、未来型公正社会研究の法政経学部としての国際シンポジウム開催の背景と重要性が言及され、併せて同学部長が代表の科学研究費「グローバル関係学」も共催しており、活発な討議への期待の旨が述べられました。

 

【プログラム】

【学長あいさつ】 徳久剛史(千葉大学学長)
【法政経学部長あいさつ】 酒井啓子千葉大学政経学部長)
【オーガナイザーあいさつ】 石戸光(千葉大学政経学部教授)
【セッション1:基調講演 メコン川流域の開発の課題】 Watcharas Leelawath(ワットチャラス・リーラワス メコン・インスティテュート代表) "Toward Inclusive Growth of the Greater Mekong Sub-Region (GMS)"
【セッション2:ミャンマーの開発について】 ①Ben Belton(ベン・ベルトン ミャンマー経済社会開発センター)   Aung Hein(オー・へイン ミャンマー経済社会開発センター) "Aquaculture and Rural Development in Myanmar: Pathways to Inclusion and Exclusion"
②Kyaw Thiha(キョティハ 千葉大学大学院公衆衛生学博士課程)   Kyaw Kyaw Soe(チョウチョウソー ミャンマー民主化関連活動家)    濵田江里子(千葉大学政経学部特任研究員) "What can Japan do for Myanmar?"
法的視点からのコメント:杉本和士(千葉大学大学院専門法務研究科准教授)
討論者:Moe Min Oo(モーミンウー 在日ミャンマー政治難民「1号」、俳優、政治活動家
【セッション3:ASEANと国際レジーム】
①藤澤巌(千葉大学政経学部准教授) "The Use and Abuse of the 'ASEAN Way'"
②五十嵐誠一(千葉大学政経学部准教授) "Civil Society's Participation in Multi-Layered and Multi-Stakeholder Regions: Toward People-Centered Development
討論者:Watcharas Leelawath(ワットチャラス・リーラワス)
【質疑応答】
【閉会のあいさつ】 水島治郎(千葉大学政経学部教授・未来型公正社会研究プロジェクト推進責任者)

 

【趣旨説明】

 はじめにシンポジウムの企画取りまとめを行った石戸光氏(千葉大学政経学部教授)より、公正な社会のあり方の1つとして「インクルーシヴネス(inclusiveness、包括性、全員参加による社会構築)が社会的公正を具体的に実現していくために必要な考え方であることが説明されました。この概念は政治経済的・社会的な地域統合を進めるASEAN東南アジア諸国連合)においても重要視されています。

 ASEANにおいては、加盟する10カ国間には政治的・経済的・社会的な多様性が存在しており、これら諸国間および国内の市民社会との「関係性」が断絶せず平和的に構築されていなければ、現在ASEANで進行する地域統合は、(EUにおいて英国が離脱表明をしたように)瓦解する可能性を常に内包しています。このような問題意識の中で、今回のシンポジウムでは3つのセッションを行うことが述べられました。

 

【セッション1-基調講演の概要】

 今回のシンポジウムでは、メコン川流域6カ国が加盟する国際機関であるメコン・インスティテュートの代表、ワットチャラス・リーラワス氏より基調講演が行われました。格差なき社会発展を研究する同機関では、インクルーシヴネスを重視しており、農産物のバリューチェーン(原材料の生育から収穫、加工、流通という一連の活動のつながり)を同地域の様々な主体の参加を促していくべき点が提起されました。

 社会の様々な主体が積極的に参加しながら地域経済の発展を目指すという視点は、まさに本シンポジウムの基調講演にふさわしい内容であり、多くの示唆が得られた講演となりました。

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【セッション2-ミャンマーの開発についての概要】

 ミャンマー経済社会開発センターのベン・ベルトン氏とオーへイン氏からは、水産物の加工が小規模な生産団体にも参画可能な形でインクルーシヴネスを確保していくことの重要性が詳細な農村調査に基づいて報告されました。農村部に関する正確なデータが十分に存在しないため、まずは現状把握のための調査を自ら行っていることや水産加工業の方が農業に比べ雇用創出力が大きい点が指摘されました。

 キョティハ氏・チョウチョウソー氏・濵田江里子氏(千葉大学政経学部特任研究員)の報告では、日本はどのような形で軍政から民主化への移行が進むミャンマーと関わることができるのかという視点からの話がされました。現在、日本に住んでいるミャンマー出身者としてキョティハ氏・チョウチョウソー氏それぞれが考えるミャンマーへの支援のあり方をお話しくださいました。今後のミャンマーにとって最も重要なことは教育を通じた人材育成であること、日本には経済的な支援だけでなく今後の国づくりを担っていく人材を育てるための支援をお願いしたいという点をお二人とも強調されていました。

 本セッションに関連して、杉本和士氏(千葉大学大学院専門法務研究科准教授)より、ミャンマーの企業のための倒産法の整備事業にJICA関連プロジェクトとして実際に携わっていることが紹介されました。その後、モーミンウー氏が討論者として登壇され、政治難民として「インクルーシヴネス」とは正反対の人生を送ったお話しをしてくださいました。

 

【セッション3ーASEANと国際レジーム】

 藤澤巌氏(千葉大学政経学部准教授)の報告では、ASEAN Wayと呼ばれるコンセンサスを重視する政策決定方式についての可能性を交えた分析が行われました。 ASEAN Wayは参加国が互いに協力できれば地域内の問題解決に効果的であるので、そうした協力関係を促進するための国際的な司法整備を進めることも必要だろうという問題提起がなされました。

 五十嵐誠一氏(千葉大学政経学部准教授)の報告では、市民社会の意思を政府による政策と同様に加味した多元的なASEAN大の意思決定が必要である点が指摘されました。国家・企業中心の地域主義から、持続可能性と社会正義を重視する人々を中心とした地域主義への移行が望まれることが述べられました。

 2つの報告についてワットチャラス氏がコメントされ、ASEAN Wayはコンサンサスに至るまで時間がかかるが、ASEANならではの有効な意思決定方式である点が改めて強調されました。その後、質疑応答では医療分野での支援の具体的必要性などについてのやり取りがフロアの参加者と登壇者の間で活発に行われました。

 

【国際シンポジウム関連-研究者ミーティングの開催】

 今回の国際シンポジウムの開催に合わせて、本シンポジウムのオーガナイザーである石戸光教授を中心に、今回のテーマである「ASEANの統合と開発-メコン川ミャンマーから考える」に関連する研究交流と研究成果の国際発信に関する会議が開かれました。

 この会議では、国内外ゲストならびに未来型公正社会研究メンバーが各自の研究内容の紹介を行い、より専門的な見地からの質問や意見交換がなされました。

 今後のさらなるグローバルな研究ネットワークの形成について議論が行われ、今回のシンポジウムの成果物として英文書籍の出版、市民社会からの提案としてASEAN関連機関への提言についても検討されました。

 

【国際シンポジウム関連行事】

 シンポジウム終了後には懇親会を行い、シンポジウムの登壇者、未来型公正社会研究メンバーを中心に参加者が集いました。

 シンポジウム中とは異なるリラックスした雰囲気の中で議論の続きに花を咲かせる方や、海外ゲスト、日本からの参加者がそれぞれの国や文化について紹介し合う様子もみられ、和やかな交流の場を持つことができました。

 

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【次回シンポジウムのお知らせ】

 未来型公正社会研究では、2017年10月~11月に海外から著名なゲストをお招きして、第三回 “Chiba Studies on Global Fair Society”国際シンポジウムの開催を予定しております。詳細は決まり次第、改めてお知らせいたします。

 

 

 

 

 

国際シンポジウムのご案内

 未来型公正社会研究では、“Chiba Studies on Global Fair Society”と題して国際シンポジウムを開催しています。11月19日(土)に開催する国際シンポジウム「ASEANの統合と開発―メコン川ミャンマーから考える」の詳細が決定いたしましたので、お知らせいたします。

 

千葉大学リーディング研究育成プログラム「未来型公正社会研究」主催 国際シンポジウム「ASEANの統合と開発~メコン川ミャンマーから考える」

- Whither the ASEAN Integration: the Case for Inclusiveness”- +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

日 時: 2016年11月19日(土)午後13時~16時10分(受付開始12:30)

場 所: 千葉大学人文社会科学研究科系総合研究棟1階      

     マルチメディア講義室(西千葉キャンパス)

最寄駅: JR総武線西千葉駅」徒歩8分、京成千葉線みどり台駅」徒歩5分

 

※参加無料・申し込み不要・先着順(定員120名)

※日本語への同時通訳あり

アウンサンスーチー氏らの新政権の政策決定に影響力を持つミャンマーの研究所や、ASEAN(東南アジア諸国連合)で格差なき社会発展を研究する国際組織などから研究者をお招きし、ASEANを主題に、公正なグローバル社会の「インクルーシブネス」(全員参加型)のあり方についてともに考え、さらには、最近ニュースでも話題になる「国家の主権」とはどうあるべきなのかについても考えていきます。シンポジウムの成果は、市民社会からの提案としてASEAN関連機関にも直接提言する予定です。

 

当日は英語で講演や発表がなされ、日本語への同時通訳があります。

国際理解講座としても最適の内容です。会場内では、ASEAN諸国を中心とした国々から輸入されたフェアトレード商品も展示・販売を行う予定です。

皆様どうぞお越しください!

<海外招聘者>

  1. Dr. WatcharasLeelawath(Mekong Institute代表)
  2. Dr.Ben Belton (CESDミャンマー経済社会開発センター)
  3. Mr. Aung Hein (CESDミャンマー経済社会開発センター)

 

<国内参加者>

  1. キョティハ氏(千葉大学医学薬学府留学生)
  2. チヨウチヨウソー氏(活動家、「ルビー」経営)
  3. モー・ミン・ウー氏(在日ミャンマー人の政治難民「第1号」、俳優、政治活動家
  4. 五十嵐誠一(千葉大学政経学部准教授)国際関係論・アジア政治
  5. 藤澤 巌(千葉大学政経学部准教授)国際法
  6. 濱田江里子(千葉大学政経学部特任研究員)政治学・比較福祉国家
  7. 石戸 光(千葉大学政経学部教授)国際経済論

 

<プログラム>

13:00~13:10  Opening Remark (by President Takeshi Tokuhisa)

13:10~13:20  Explanation of Issues and Introduction of Mr.Aung Hein, Dr.Ben Belton, Dr.Watcharas Leelawath and Mr. Moe Min Oo (by Dr.Hikari Ishido)

 

<Session 1> Mekong Institute

13:20~13:50  Keynote lecture Dr.Watcharas Leelawath

 

<Session 2> Myanmar

13:50~14:20  Presentation by Mr.Aung Hein, Dr.Ben Belton

14:20~14:50 What can Japan do for Myanmar? (Mr.Kyaw Thiha, Mr.Kyaw Kyaw Soe and Dr.Eriko Hamada)

14:50~15:00  Mr.Moe Min Oo

 

15:00~15:15  Break (please view the photos and products displayed)

 

<Session 3> ASEAN and the International Regime

15:15~15:30  Presentation by Dr.Seiichi Igarashi

15:30~15:45  Presentation by Dr.Iwao Fujisawa

15:45~15:55  Discussant:Dr.Watcharas Leelawath

 

15:55~16:05  Questions and Answers

 

16:05~16:10  Wrap-up (Dr.Hikari Ishido) and Closing Remark (Prof.Keiko Sakai)

 

<問い合わせ先>

千葉大学政経学部 公正社会研究会 事務担当 登尾(のぼりお)

電話 : 043-290-2375

FAX : 043-290-2386

E-mail :leading-21*chiba-u.jp(*を@に変換してください)

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第一回 歴史動態班研究会について

第一回歴史動態班研究会が開催されました。

 

日時 2016年9月16日(金)

   16時~18時

場所 人社研棟4階 共同研究室1

報告者 法政経学部 准教授 佐藤健太郎

報告テーマ 「公正と平等を歴史的立場から論ずるために-今後の展望と課題-」

 

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 2016年9月16日に未来型公正社会研究会歴史動態班の第一回研究会を開催いたしました。今回は「公正と平等を歴史的立場から論ずるために-今後の展望と課題-」というテーマで、法政経学部准教授である佐藤健太郎氏が報告を行いました。報告は二部構成からなり、第一部は未来型公正社会研究プロジェクト全体における歴史動態班の位置づけの確認、第二部は「明治期における『平等』理念の受容と政治」というタイトルでの研究報告となりました。

 第一部では本プロジェクトが考える「公正」とは配分の平等にとどまらず、異質性や多様性を重視した概念であること、20世紀の福祉国家体制の下で実現してきた平等と社会的安定が再編を迫られている現状を確認しました。特に日本の文脈では木部尚志『平等の政治理論-“品位ある平等”にむけて』が論じたように、「自由なき平等」、「画一的な平等主義」という批判がなされ、近年は深い考察もないまま「結果の平等」から「機会の平等」へと議論が進んでいることが指摘されました。ここで浮かぶ疑問として、個人間の平等なのか、集団間の平等なのか、日本社会はそもそも平等なのかが挙げられました。こうした疑問を解くためにはマクロな構造と合理的な個人の行為を多元的な社会関係が織りなす関係に着目し、経験に基づいた理論を目指しながら平等を多面性や複雑性を捉えなおす作業が必要でないかという木部説が紹介されました。歴史動態班としては、歴史という共通性を用い個人および集団に着目し、各々の問題関心に基づいた歴史的な研究を行えば、おのずと平等の複雑性が浮かび上がるはずであり、平等と公正の関係がもつ問題性やあるべく両者の関係に向けた示唆が得られるのではと考えていることが述べられました。

 次いで参加メンバーの論考を検討し、メンバー同士の問題関心がどのように関連し、そこから平等と公正をめぐる問題の所在を多面的に明らかにしていく作業を行いました。まず冨江直子『救貧のなかの日本近代-生存の義務』では救貧事業を通じて、皆を等しく生きさせるのは公正なのか、生きることは権利なのか義務なのかという問題提起がなされました。理想の生の実現と経済的貧しさの関係への着目は、藤野裕子『都市と平等の民衆史 東京-1905年-1923年』も共有する視点であります。反政府的な市民活動の側面を有する1900年代の都市暴動は、まっとうな道徳と男らしさという対立構造を内包し、政治運動の洗練化により壮士的振る舞いが不可能となった者たちの鬱屈した感情が朝鮮人虐殺の要因となったことが指摘されました。平等や公正は民衆の専売特許ではなく、官僚人事をめぐる官僚集団間の争いを取り上げた論考として若月剛史『戦前日本の政党内閣と官僚制』があり、さまざまな集団内部あるいは集団間における平等理念の争いを扱ったものとしては佐藤健太郎『「平等」理念の政治-大正・昭和戦前期の税制改正と地域主義』が紹介されました。戦前における義務は納税と兵役であるが、明治期の元老院議官の徴兵制をめぐる論理を分析した尾原宏之『軍事と公論-明治元老院の政治思想』が取り上げられました。関係論的な平等観をめぐっては地域に目を向けることも重要であり、中西啓太「所得調査委員と日露戦後の地域社会-埼玉県の事例から」(『史学雑誌』)と池田真歩「明治中期東京市政の重層性:星亨と区議-有力公民層の対抗関係を通じて」(『史学雑誌』)では、地域の実態を明らかにする作業を通じて望ましい平等と公正を考え方への一考察が提案されました。

 第二部では政治的理念としての平等がどのようにイメージされてきたのかを明治期に焦点を当てた整理がなされました。特に「平等」という概念に込められた固有の価値と意味があるとするならば、それは一体何なのかを明らかにすることが試みられました。幕末から明治にかけて西洋思想の中核的理念として日本で一番重要だったのは自由であり、平等は自由とのセットで位置づけられる概念でした。次いで公正と平等について考察すると、両者はいずれも国内政治を論じる際には用いられないが、外交において理念的な言葉として明治政府が用いている様子が明らかとなりました。

 具体的な事例として中江兆民主筆を務めた『自由平等経論』を分析すると、一般的な代議士レベルでは自由は論争の余地がない良い価値として確立されているが、平等については個人により理解度に差があり違和感が提示されているのが特徴だという点が指摘されました。フランス革命における自由・平等・博愛を出発点とした平等を考察した議論においても、平等とは貧富貴賤をなくすことを意味するのではなく、人をあまねく自由にすることとして捉えられている様子が明らかになりました。経済的平等に言及した論考もあるものの立法的手段による貧富の解消には消極的な議論に終始していました。

 佐藤氏によれば、中江兆民が自由とセットとしての平等論に終始し、平等を単独で強調しなかった理由としてフランス革命を礼賛する立場、負の側面に着目する立場のいずれも自由の原理を踏まえた平等という路線を踏襲していたことが挙げられました。これに加えて急進的な平等は流血事態を伴いかねないこと、民党大合同路線の展開を受け、明治期の日本では平等を抑制し自由を強調し、あくまでも自由とセットとしての平等に関する議論が展開したことが論じられました。

 佐藤氏の報告終了後、平等を考える上での共同体とのあり方や人格に対する視点、民族やジェンダー差別が根強く残るグローバル社会における「公正」を考えながら歴史研究をおこなうのであれば植民地主義帝国主義は避けられないのではないか、被支配者・地域が支配者を覆すには必然的に近代化・西洋化を伴わざるを得ないという意識が必要ではないかという問題提起がなされました。また議論場や理念・言説としての平等と実態としての平等の間には乖離があるのではないか、因果関係を問う手法の研究だと運動や政策形成に関われない人々には焦点があたらないまま終わってしまうことを懸念するといった方法論に関する点も指摘されました。

 20世紀の福祉国家が想定してきた均質な社会で一律な個人の平等と社会的安定を追及する動きから、流動化した社会における多様な個人が存在する多様性や異質性を前提とした中での「公正」は何を意味するのか、歴史叙述を通じてどういた貢献ができるのかに関し活発な質疑応答がなされました。

第六回研究会について

第六回公正社会研究会が開催されました。

 

日時 2016年9月14日(水)

   12時30分~14時

場所 人社研棟4階 共同研究室1

報告者 人文社会科学研究科 博士課程 中井良太

報告テーマ 「自由と権利から公正を考える-左翼リバタリアニズムを手掛かりに」

 

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 2016年9月14日に未来型公正社会研究第六回研究会を開催いたしました。今回は「自由と権利から公正を考える-左翼リバタリアニズムを手掛かりに」というテーマで、未来型公正社会研究RAで人文社会科学研究科博士課程所属の中井良太氏が報告を行いました。

 中井氏の報告は本研究会の課題となっている「公正」という概念を改めて整理しなおし、その上で「新しい公正」に資するのではないかと考えられる左翼リバタリアニズムの議論を紹介するものでした。法哲学、政治哲学の議論から「公正」を捉えなおすことを主な目標とし、具体的には左翼リバタリアニズムの代表的論者であるヒレル・スタイナーの議論における自由と権利の検討を通じて「新しい公正」へ向けた一視座を提供しました。

 今回の中井氏の報告では、まず本研究会が考える「新しい公正」は正義という理念を基礎としながら、平等や自由という複数の価値も含むため、諸価値間のバランスをいかに図るのかが重要であり、それに加えて異質性や多様性も重視する概念として提起されている点を確認しました。次いで中井氏からは、国家と個人の権利について検討するリバタリアニズム、その中でも特に左翼リバタリアニズムと呼ばれる思想が「新しい公正」を考える上で有益だという提起がなされました。左翼リバタリアニズムでは、自己所有権は認めるが同時に広範な分配も認める立場にあり資源の分配に関する平等主義的な配慮がなされること、自由と権利という2つの価値を重視するが、結果としては再分配も認めるため平等も内包しているという理解が示されます。そこで左翼リバタリアニズムの最も代表的な論者であるスタイナーの議論における自由と権利についての考察がなされました。

 スタイナーはアイザヤ・バーリンの積極的自由/消極的自由の分類では、消極的自由の立場を採り、妨害がないこと、ある行為が妨害されない領域を確保することが自由という価値において重要になるという考えを示します。スタイナー自身が自由を考える上で権利がポイントとなると主張する理由は、それが消極的自由の配分を規定するものであり、権利を用いることで自由が妨害されない状態を確保することにつながると考えるからだとされます。人の領域を構成する権利は所有権として考えられ、スタイナーの議論では所有権に基づいた領域が共存可能となるのは、権利に対応する義務が特定された行為を命じるからであり、権利が共存可能な場合には他の全ての人には権利の保有者が特定の対象物を使用するのを妨げない義務があると解釈されていることが紹介されました。

 以上のスタイナーの議論に対し中井氏からはスタイナーは所有権の重要性を指摘しているにも関わらず市場の機能への言及がほとんどない点、成人間における自由と権利の話としては筋が通るが子どもの権利をどのように説明するのかが不明慮であることが指摘されました。その上で今後の検討課題として、世代間正義のあり方をどのように取り扱うのか、平等を担保する際に重要となる資源配分への考察の必要性が挙げられました。

 中井氏の報告終了後、市場と資源という要素を組み込んだ際には権利と平等はいかにして連関するのか、リベラルと左派リバタリアンの相違はどこにあるのか、「大きな政府」・「小さな政府」を論じる際の「大小」は権限に関してなのか再分配の規模に関してなのかという質問がなされ、活発な質疑応答が行われました。

第五回研究会について

第五回公正社会研究会が開催されました。

 

日時 2016年7月27日(水)

   12時~13時20分

場所 人社研棟4階 共同研究室1

報告者 法政経学部 教授 石戸光氏

報告テーマ 「ASEANの統合はどこへ:インクルーシブネスについて考える(Whither the ASEAN Integration: A Focus on its Inclusiveness)」

 

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 2016年7月27日に未来型公正社会研究第五回研究会を開催いたしました。今回は「ASEANの統合はどこへ:インクルーシブネスについて考える(Whither the ASEAN Integration: A Focus on its Inclusiveness)」というテーマでグローバル・地域班所属の法政経学部教授である石戸光氏が報告を行いました。

石戸氏には、本年11月19日に開催を予定している千葉大学リーディング研究育成プログラムの国際シンポジウムの概要についてご紹介いただきました。まず、西洋諸国とは異なる独自の形で統合を進めているASEANでは、「インクルーシブネス(Inclusiveness)」、日本語に訳すと「あまねく広がる」、「全員参加型」、「社会の各層の人々を含めること」を重視した社会づくりが目指されていることが紹介されました。その上で国際シンポジウムでは、①地域統合を進めるASEANにおける「インクルーシブネス」つまりは包括性や全員参加のあり方について、②政治、経済、民族、言語といったASEANの多様性と地域統合の関係、③市民社会の役割、④複数の主権国家が共同で開発を進めるための法的枠組みの形成といったASEAN統合と「主権」をめぐる議論の4点を中心に海外から招待した専門家を交えて一般公開の形で議論することが報告されました。現在ASEAN加盟国は10か国あるが、今回はその中でも民主化途上にあるミャンマーに焦点を当てること、キーワードとしては、「格差なき経済統合」、「市民社会」、「主権国家」、「内政干渉」、「教育・福祉政策」が挙げられました。

海外招へいゲストとしては、ミャンマー民主化政権の政策に大きな影響力を有する国際機関の一つである独立研究機関経済社会開発センター(Centre for Economic and Social Development)から農村家計調査や水産物産業がもつ貧困削減の役割について研究しているベン・ベルトン氏(Dr. Ben Belton)とオー・へイン氏(Mr. Aung Hein)の2名と国際機関メコン・インスティテュート(Mekong Institute)代表のワットチャラス・リーラワス氏(Dr. Watcharas Leelawath)の合計3名を招待することが報告されました。3名の海外ゲストはいずれもASEANにおける「インクルーシブ」な開発のあり方や加盟国が直面している課題に対し専門的な知見から具体的な政策提言を行っている方々です。そのため本シンポジウムでの議論をミャンマー政府ならびにASEANへの政策提言として具現化していく上で3名の参加は重要であることが指摘されました。

石戸氏からは今回の国際シンポジウムでは、外務省、経済産業省といった政策形成者側からの提言だけでなく、市民社会の目線を積極的に取り入れたい旨が表明されました。研究者や専門家だけでなく、一般市民の方にASEANミャンマーについて興味を持ってもらい、ASEANが抱える政治・経済・文化・言語・民族の違いから生まれる差別や問題、そういった問題がある中で「インクルーシブ(全員参加)」な社会のあり方とはどういった形になるのか、市民の関わりを通じた支援のあり方を参加者と共に考えたいと述べられました。

石戸氏の報告終了後、地域統合はヨーロッパが先行していたがエリート主導であったため「取り残された人々」の問題が顕在化していること、「上からの統合」はアジアやラテンアメリカでは行われておらず、そうした国々が行っている柔軟な統合形態の方が現代的であり持続可能性が高いのではないかという指摘がなされました。またASEAN内では「内政不干渉」、「全会一致」はコンセンサスとなっており、2003年頃からは「参加型地域主義(participatory regionalism)」や「市民中心型地域主義(people-centered regionalism)」をキーワードに欧米向けの発信はしているが実態が明らかになっていないこと、大義名分を取っているだけであり実際に市民が「参加」している事例は少なく理念と実践の乖離があるという指摘もありました。11月の国際シンポジウムに向けて参加者から内容面、実施面双方に対しさまざまな質疑や提案がなされ、活発な意見交換が行われました。

第四回研究会について

第四回公正社会研究会が開催されました。

 

日時 2016年6月8日(水)

   午後15時45分~18時

場所 法政経学部棟 第1会議室

報告者 法政経学部 教授  酒井啓子

          准教授 三宅芳夫氏

          准教授 中村千尋

          教授  水島治郎氏

報告テーマ 「ヨーロッパの『移民』問題から学ぶ:森千香子著『排除と抵抗の郊外』       を題材に」

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 2016年6月8日に未来型公正社会研究・第四回研究会を科研費(基盤A)「宗教の政治化と政治の宗教化」(研究代表者:酒井啓子千葉大学教授)と共催いたしました。今回は「ヨーロッパの『移民』問題から学ぶ:森千香子著『排除と抵抗の郊外』を題材に」というテーマで、法政経学部教授である酒井啓子氏、准教授である三宅芳夫氏、中村千尋氏、法政策実証班所属で法政経学部教授である水島治郎氏の4名が報告を行いました。

 始めに酒井氏より2016年2月に森千香子氏が出版した『排除と抵抗の郊外-フランス<移民>集住地域の形成と変容』というパリ郊外のオベールヴィリエ市における移民社会を取り扱った本書には、移民問題の枠を超えた広い含意があるので、本日の研究会では関連する分野を研究してきた4名による感想の共有と批判的考察を行いたいという趣旨説明がありました。 

 酒井氏の報告では、まず本書の主張はフランス生まれの移民2世を「移民」という名称で括ることに最大の問題であり、「移動してきた人」という側面を強調するあまり当事者が経験する困難を当事者自身に探ってしまうリスクを高めている、原因はフランス社会に根差す差別意識や排除の構造にあるはずだということが紹介されました。その上で本書の目的はこれまで「移民の統合問題」として扱われてきた問題を「エスニック・マイノリティへの差別・排除、その背後にあるレイシズム」の観点から再検討することにあることが述べられました。本書では都市と郊外の格差問題は労働者階級の問題だという主張は、フランスでは従来は左派が行ってきたけれども、そこには人種やエスニシティに関する視点は欠落していること、フランスでは共和主義に基づく国民統合の理念を重視するため、エスニシティは埋没し、理念と実態の乖離が生じてきたという指摘がなされています。中東研究へのインプリケーションとしては、「階級意識レイシズムが交錯する都市貧困問題」、「階級からエスニシティ」へという視点の汎用性、エスニシティをめぐる建て前と本音の乖離、トランスナショナルに成立するコミュニティを分析するための視座の3点への言及がありました。

 三宅氏の報告は、「フランスにおける共和主義の文法とマイノリティの排除」というタイトルで、政治的な場で自らの主張を他者に受け入れてもらうには「共和主義」という共通の「文法」の枠内で行わないと許容されにくいという観点からの批評が行われました。フランスではカトリックを排除した共和主義のヘゲモニーが19世紀から確立しており、他国と比べてよりラディカルな政教分離が行われてきました。そのため「イスラム」をめぐる議論においても、公共の場での宗教行為はフランス共和制の理念に反するという主張が成立しやすく、エスニック・マイノリティの排除を正当化する方向へ問題のすり替えがなされるという指摘がなされました。

 中村氏の報告は、経済史的観点から行われました。その観点からすれば、本書は、都市形成の過程を網羅しており、歴史研究としても充実していることを示しました。そして、とりわけ移民政策史の視点から3つの指摘を行いました。1つ目は国家の役割に対する評価で先行研究が移民問題への政府の不介入を論じてきたのに対して、郊外の形成に国家が果たした役割は大きいと評価する点に本書の主張の一つがあると述べました。2つ目は都市政策におけるアクターに関する分析についてです。特に多様なアクター間の関係性に踏み込んで分析することも可能であるかもしれないということを指摘しました。3つ目は共和主義の建前と実態の乖離に関して、「乖離」には、国家としての理想と現実の乖離とエスニック・マイノリティの若者にとっての理想と現実の乖離という二重の意味があるという本書の指摘を紹介したうえで、移民政策研究においても、こうした指摘を補強するような議論がなされてきたことを示しました。

 水島氏の報告では、戦後ヨーロッパでは移民労働力が不可欠であり、フランスもオランダも公共住宅へ移民を受け入れるようになったが、そこにはフランスとは異なるオランダ的な特徴があるとしてアムステルダム郊外のベイルメールの事例を紹介しました。オランダでは白人中産階級を想定した郊外型都市空間の創出が行われたが、オランダ人には不評でスリナム系住民が増加し、また麻薬・犯罪などの問題が深刻化しました。1990年代から、それまでの大規模開発志向を転換し、住民と協議をしながら再生事業を行い、高層住宅を低層住宅群に置き換え、親しめる都市空間を創り出していきました。オランダとフランスの違いは、オランダでは再生計画にあたり政府が暴力的、強制的に住民を追い出すことはせず、住民の主体的な参加による地域再生が行われたことが紹介されました。

 4名の報告終了後、フランスの政治体制、特に地方自治体が果たす役割への着目、本書が実施した事例研究から引き出される普遍的な問題意識とは何だったのか、問題の本質はレイシズムなのか、格差なのかといった点に関し、参加者からさまざまな質疑と活発な議論が行われました。

第三回研究会について

第三回研究会が開催されました。

 

日時 2016年4月27日(水)

           午後12時~午後13時20分

場所 人社研研究棟4階・共同研究室1

報告者 皆川宏之先生(法政策実証班)

報告テーマ「合理と不合理の間-日本の非正規雇用法制を考える」

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 リーディング研究育成プログラム「未来型公正社会研究」第三回研究会

 

 2016年4月27日に未来型公正社会研究第三回研究会を開催いたしました。今回は、「合理と不合理の間-日本の非正規雇用法制を考える」というテーマで、法政策実証班所属の法政経学部教授である皆川宏之氏が報告を行いました。

 皆川氏の報告は、公正な社会のあり方を検討していく題材として、近年の日本でも議論の対象となっている正規雇用非正規雇用の間の労働条件格差の是正を取り上げるものでした。具体的には、日本における雇用の現状を概観した上で、諸外国をモデルに非正規雇用に対する法規制のアプローチを類型化して整理し、日本での労働条件格差是正を指向する法制における「合理」と「不合理」をめぐる解釈に関する視座を提供しました。

 今回の皆川氏の報告では、まず、日本では特に1990年代後半以降、正規雇用が減少し、非正規雇用が顕著に増加していること、正規雇用非正規雇用の間では年齢別の賃金カーブならびに各種手当の支給状況に大きな差があること、非正規雇用に比べ正規雇用の賃金が高い理由は職場における責任の重さや中長期的な役割に関する期待が異なるからであることが各種の統計データから確認されました。次に、非正規雇用に対する法規制アプローチの在り方は、大きくアメリカ型とEU型の2種類に分類されることが提示されました。随意雇用原則を基本とするアメリカでは、正規・非正規の雇用形態に着目した差別禁止法制が特に存在しないのに対し、 EUでは典型雇用(無期、フルタイム、直接雇用)に対し非典型の雇用形態を理由とする不利益取扱いを禁ずる指令が出され、各国で国内法化されていることが述べられました。

 これを受けて、皆川氏からは、日本での非正規雇用に対する法規制アプローチは、近年、アメリカ型からEU型へ徐々に移行しているという指摘がなされました。日本の場合、以前は雇用形態に基づく差別を禁止する法規定が存在しませんでしたが、しかし、非正規雇用の増加に伴って法整備が徐々に進展し、1993年に制定されたパートタイム労働法は、当初、パート労働者の処遇改善を事業主の努力義務としていましたが、 2007年の改正時で通常の労働者と同視すべきパート労働者に対する差別的取扱いを禁止する規定、2014年の改正で全てのパート労働者に対する「不合理」な待遇の相違を禁止する規定が設けられました。また、2012年には労働契約法の改正により、有期契約労働者についても、無期契約労働者との間の「不合理」な労働条件の相違を禁止する規定が設けられています。すなわち、パート労働者や有期の契約社員と正社員との待遇の違いは、職務内容、人材活用の仕組み・運用を考慮したうえで「不合理」と判断されるものであってはならないとされたのです。

 こうした法規制アプローチへの解釈をめぐっては、(1)「合理的」な労働条件の差異とは何か、(2)「不合理」な労働条件の差異とは何かが論点となります。EUの場合は、労働条件の差異が「客観的」な理由によるか否かの2分法となるのに対し、日本の法制をめぐる議論では、労働条件の相違が①「合理的」である場合、②「合理的」とはいえないが「不合理」であるとまではいえない場合、③「不合理」と認められる場合の3分法がみられるところに特徴があるとされます。皆川氏によれば、この中間的な②は、日本における正社員の雇用慣行に基づく非正規雇用との労働条件格差を正当化するか、あるいは是正しようとするところに現れるものと整理されます。

 以上、皆川氏の報告では、日本において雇用形態による労働条件格差の是正に向けた法規制には一定程度の進展が見られるが、その具体的な解釈の適用については未だ判断基準の形成途中にあることが明らかになりました。特に「不合理と認められるものであってはならない」という文言の解釈をめぐっては、「合理」と「不合理」の二分法には収まりきらない範疇が存在する様子がみてとれました。

 皆川氏の報告終了後、ヨーロッパの判断基準である「客観的」と日本が用いる「合理的」の意味の違いは何であるのか、なぜヨーロッパと日本では異なる表現を用いるのか、「不合理」を立証する主体は誰であるのかという点をはじめ、参加者からさまざまな質疑がなされ、活発な議論がなされました。

 次回、未来型公正社会研究第四回研究会は、酒井啓子氏、水島治郎氏、中村千尋氏、三宅芳夫氏を評者に「『排除と抵抗の郊外』(森千賀子著)を読む」をテーマに2016年6月8日(水)16時30分より法政経学部第一会議室にて実施予定です。